2025年の技術・働き方・メンタルにおいて考えたこと
はじめに
2025年という1年が、静かに終わりへと向かっています。今年はフリーランスとして本格的に活動を始めた年であり、技術的にも個人的にも大きな変化があった1年でした。今年1年の技術面での学び、成長を感じた点を振り返り、少し先の未来に向けた展望を整理したいと思います。
技術面での学び
Go / ReactによるマルチテナントSaaSの開発
2025年は開発に集中をした1年となりました。
ここ数年のキャリアはマネジメント中心であったり、開発をしつつチームビルディングを行うことが多かったのですが、マネジメント方面の仕事はほとんどやらず、開発や設計についてじっくり腰を据えて取り組むことができました。
技術スタックは、バックエンドがGo/Node.js、フロントエンドがReactです。
マルチテナントSaaSの開発に携わることができ、マルチテナントSaaSの設計について開発を通して理解することができました。
AIを使った開発
開発方法が大きく変わりました。従来の人間が全てを行う開発からAIを活用した開発がこの1年で大きく変わったポイントです。私の18年のキャリアの中で最も大きな変化だと感じています。
コーディングだけでなく、仕様の調査や設計、コードレビューなど多くの領域でAIを使うようになりました。
AIによる開発は今までの人による開発と比べて開発速度、品質ともに向上すると断言できます。
一方でAIは万能ではなく、最終的な品質を決めるのは人間の判断であることも同時に学びました。
こういったことを知識ではなく、現場で肌で感じれたことが貴重な経験となりました。
「判断」「構造」「距離感」の学び
技術的に収穫のあった1年となりましたが、特に成長として実感していることは技術そのものというより、仕事の進め方や思考の質が変わったことにあると考えています。特に「判断」「構造」「距離感」の3つのポイントについては言語化できるレベルで明確な学びがありました。
判断|委ねることの強さ
以前は「自分で判断しなければならない」「自分が決めるべきだ」という思いが強く、時としてまわりとの衝突に繋がってしまう恐れがありました。
あらためて、いちプレイヤーとして働くようになり、それに伴い仕事での観察や内省を通して、
- 判断に必要な情報を整理して提示する
- メリット・デメリットやリスクを言語化する
- 最終的な判断は相手に委ねる
という進め方のほうがスムーズにいくのではないかと考えました。
結果として、
- まわりとの摩擦が減る
- エネルギーを無駄に消耗しない
- 決定者が明確になり意思決定の速度が上がる
といった効果が生まれ、仕事がスムーズに進むようになったと感じています。
主体性がなくなったのではないかとの懸念を持たれるかもしれませんが、「判断を委ねること」に価値を置けるようになったということが本質的な変化であり、状況に応じて適切な判断や振る舞いができるようになったのではないかと思います。
構造|仕組みに目を向ける
問題を「構造の問題なのか、個人の問題なのか」で切り分けて考えられるようになったことが以前と比べた大きな違いです。
以前は、現場で起きる違和感やトラブルに対して「能力や姿勢の問題ではないか」「自分が何とかすべきではないか」と考え、解決の難しい領域にエネルギーを消耗してしまうことがありました。
現在は構造に問題がないかという観点で捉えるようになりました。
具体的には次のように考えます。
- 役割設計や責任範囲に歪みはないか
- 意思決定やレビューの仕組みに不備はないか
- ルールや前提が適切に共有されているか
構造の問題に対しては、前提や仕組みを少し変えるだけで、再発防止や影響範囲の縮小といった効果的なアプローチが取れることを学びました。
一方で、個人の能力や性格、価値観に起因する問題については、それが自分の立場で解決できる領域なのかを判断し、自分が介入すべきでないものには介入しないと割り切れるようにもなりました。
このように問題の対象について識別することで、より効果的に時間とエネルギーを使えるようになったと思います。
距離感|適切な余白を保つ
仕事との間に、適切な余白を置けるようになったことも、この1年での変化です。
距離感が近いと相手や組織への期待であったり、その期待とのギャップが生じます。
期待とのギャップからはネガティブな感情が生じやすく、不要にエネルギーを消耗してしまい、安定したパフォーマンスを発揮するのが難しくなってしまいます。
安定したパフォーマンスを発揮するには、適度な距離感を持つほうがよいことがわかってきました。
また、コードレビューへの向き合い方にも変化がありました。
以前は、コードレビューで多くの指摘が入ると少なからず気持ちが揺れていましたが、こちらについても感情とは切り離して淡々と対応することができるようになりました。
この変化はAIによるコーディングができるようになり、対応コストが下がったことも影響していると考えています。
この距離感が身についたことで、不要にエネルギーを消耗せず、安定して価値を出し続けられる感覚を持てるようになりました。
以上のような変化は正社員→フリーランスへの立場の変化とAIによる開発手法の変化が影響していると思っており、継続的にポジティブな効果をもたらすと考えています。
これからについて|少し未来の話
この1年間を通して、自分の強みは「実装力」そのもの以上に、構造の問題を識別し、それをどう解決するかを考えられることにあると、よりはっきりしてきました。
なぜそれができるのかというと、18年間の現場経験の中で、さまざまなチーム・プロダクト・フェーズを見てきたことで、何が機能しやすく、何が形骸化しやすく、どこで現場が詰まりやすいのかを肌感覚として理解できているからだと考えています。
理論として正しいかどうかだけでなく、「この現場で本当に回るか」「いま導入すべきかどうか」といった観点で判断できることは、これまでの経験が積み重なった結果です。
こういった自分の強みがわかってきたため、今後はより包括的な技術判断が求められる仕事に携わっていきたいと考えています。
現場で手を動かしつつも、プロダクトやチームが前に進むための「判断」と「構造」に関わる役割を担うことで、より大きな価値を提供していければと思います。
おわりに
この1年間は、技術・働き方・メンタルの一つひとつの学びが、次のステージへの階段となった1年のように思います。
最後に少し抽象的な話しになりますが、今まではどちらかというと太陽に象徴されるようなエネルギーや情熱に魅力を感じていましたが、そういったものは一時的で長く続くものではありません。もちろん、時にはそういったエネルギーも必要ですが、今は雪の荒野に静かに立つ常盤木のように静かで継続的な生命力に魅力を感じます。
この常盤木のように静かに、歩みを止めず、継続的に成長していけたらと感じるこの頃です。
今回は1年の振り返りということで個人的な内容となってしまいましたが、同じようにソフトウェアエンジニアやフリーランスとしての働き方に興味がある方の参考になれば幸いです。